すごい気配り

「痒いところはありませんか？」
美容師の問いかけに私は、俳優A男とアイドルB子の関係、と答えた。
「かしこまりました」
ちょきん。とハサミを動かす音。一体何だろう？

店を出てスマホを確認するとA男とB子の破局が速報で入っていた。
ずっと感じていた歯痒さ。それがなくなり爽快な気分だ。
あの美容師さんに頼んだらもっと人を切ってくれるかな…？
ウザイ上司もぶりっ子な部下もマウントを撮りたがる同僚も愛想の悪い店員も全部カットし


『おい！ニュース見たぞ。お前またやっただろう？』
「すみません、店長。つい…」
『まあいい。あの二人の縁は俺がカットする予定だったからな。それよりお前、さっきのお客さんもカットしただろう』
「はい。面倒なクレーマーでしたので世界から切り離しました」
『…今後は事前に、俺に伝えるように』
「店長」
『何だ？』
「この会話、覗かれているようなのでカットしますね」
ちょきん