とかげ

念願のロックガーデンを仕上げてしまおうと、珍しく早起きした。
ロックガーデンとは、石や砂利を自然にできたかのように配置し、植物を植えた花壇のことだ。
ずいぶん前から構想し材料をそろえていたのに、夏は暑くてやる気が起きず、秋は外遊びで忙しく、冬の入りから深まるまでは寒さを理由に放置していた。年が明け、ようやくこれではいかんと重い腰をあげたのである。
まずは子供が『要石』と名付けたおおきな岩をテコで持ち上げることにした。引っ越してくる前から庭にあった特別なものだが、敷地内で移動したところでバチは当たるまい。
「パパがんばれー」という子供たちの声援を受けながら、一心不乱に力を込めたところ、びくともしなかった岩はミシミシいいながらのったりと持ち上がった。するとなにかちいさな生き物が横たわっていることに気づいた。冬眠中のとかげだった。
庭づくりはまた先延ばしだ。わたしは岩をゆっくりと元に戻した。