初バイトは

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大学生活にも慣れてきたから、バイトを始めることにした。
申し込んだのは、駅前での配布の仕事。未経験OK、簡単。出来高払いというところにも惹かれた。
集合場所に行くと、面接で会った人がいる。挨拶すると、
「それではお願いします」と一言。
「あの、何を配れば?」
ビラやティッシュはどこだろう。
すると彼は、
「あぁ、初めてでしたね。配るのは『気』です。必要としていそうな方に配ってください」とニッコリ。
え?
辺りを見回すと、僕と同じ制服を着た人達が、テキパキ活動している。
道案内したり、女性に日傘を差し掛けてあげたり。相手もうれしそうにお礼を言っている。
でもいざ僕の番になると、すごく難しかった。まず一歩が出ない。勇気を振り絞り荷物を持ってあげようとしても、「ひったくり!」と逃げられる始末。
散々な気持ちで終了時間を迎えたが、男は「悪い見本ですね、すばらしかったです」と、手放しで褒めてくれた。
ファンタジー
公開:25/02/03 20:36

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

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