ショートショートの村

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昔々、ショートショートでしか会話をしない「ショートショート村」がありました。そこでは誰もが400字以内の言葉で簡潔に話し、長話はご法度とされていました。

しかしある日、村に「長編の魔神」が現れました。

「ふっふっふ、私は長編の魔神。魔界に生まれ、2歳で王となった。それから幾多の戦いを経て、語るべき武勇伝は数知れず――」

その自己紹介だけで三時間。村人たちは顔を青ざめ、頭を抱えました。

「もうやめてくれ!は、話が長すぎる…要点を…!要点をまとめてくれえ!!」

だが魔神は止まりません。生い立ち、家族構成、趣味、好きな食べ物、最近ハマっていることを延々と語り続けました。

村人たちは疲れ果て、全員が眠り込んでしまいました。しかし魔神の話は終わりません。

「そして私が五歳の時……」

ショートショート村は長話に沈み、二度と簡潔な会話が交わされることはなかったと。

ちゃんちゃん
ファンタジー
公開:25/02/03 17:47
ショートショート 魔神 ファンタジー 不思議 話が長い

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