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 隣の先輩との距離は三センチほど。けれどもその三センチが遠い。どのくらい遠いかっていうと日本とブラジルの距離ぐらい遠い。
 勇気を出して誘ったまではよかったものの、エスコートはから回るし話は盛り上がらないしでずっと気まずい。
 もう帰りたい。誘ってごめんなさい。けれども「もう帰りましょうか」と言うのも辛い。どうしたらいいのかわからない。
 途方に暮れながらベンチに座って冬の夜空を見上げている。満点の空から今にも星が降ってきそうだ。
「あ、流れ星」
 先輩が言った。え?どこです?見えなくてキョロキョロしていたら、肩を叩かれ振り向くと至近距離に先輩の顔があった。
「今、願い事したんだけど。なんだと思う?」
 え?
「君と同じ事、願ったんだけど」
 当ててみてよと先輩が言う。
 三センチの距離は一センチまで縮んだ。ゼロセンチになるのはすぐみたい。
 
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公開:25/02/02 23:34

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