すごい気配り

今年の節分は２月２日。いつもより１日早いそれに、俺は感謝している。
俺は地獄に住む鬼で、節分には人間を襲いに行かなければならない。俺だけ、空港に行っていいわけがない。
２月２日。人間の彼女がウィーンへ留学する。
彼女に言われた。一緒に来て欲しいと。俺に隣で支えてほしいと。
凄く嬉しい。だけど…俺は鬼だ。そんな俺が、彼女の隣にいていいわけがない。
だから俺は見送りにすら行かないと決めた。
２月２日。俺は朝から豆をぶつけられている。それも人間からじゃない。身内からだ。
両親に豆をぶつけられ、同僚に豆をぶつけられ、閻魔大王にまで豆をぶつけられる始末。
一体俺が何をした！？
「鬼は外！福は内！お前は彼女と海外に行くべきだ！幸せは二人の内にあるんだ！」
その言葉にハッと気づかされる。
俺も彼女が隣にいないなんて嫌だ！
皆に追い立てられ、空港へと走る。彼女を見つけ、抱きしめた。
もう、絶対に離さない。