ステキなバッグ

わたしの趣味は中古ショップで洋服やバッグを探すこと。自分だったら絶対選ばない色やデザインのものに出会えることが一番の醍醐味だ。
そして今日、ついに運命のバッグに出会った。荷物がたくさん入って丈夫で長持ちしそうな、欲を言えば素敵な形のバッグを長いあいだ探していた。ワインレッドは好みじゃなかったけれど、傷だらけになるまで大切にされていたのだと思うと、磨いて蘇らせたくなってしまう。わたしは迷わずそのバッグを手に入れた。
家に帰ると、さっそく汚れを拭き取り、ワックスをかけた。するとピカピカになったバッグがパカッと開き、ホログラムを再生しはじめた。
バッグはある女性が就職祝いにもらったものだった。やがて交際相手から夫になった男性と二人の子供たちが映像に加わり、最後は中年になった彼女自らバッグを手放していた。
思い出はたくさんあったほうがいい。わたしはバッグと旅行へ行く計画を立てることにした。