すごい気配り

小春日和に誘われて、近々寒波が来るというにのこのこと外に出てきたバカな蛇。それが私。
案の定、急な寒さに動けなくなって困っている私は心優しい夫婦に助けてもらった。
冬の間、倉庫にいていいと言ってくれた。さすがにそこまではと遠慮する私に男が言った。
「今は鼠がいませんがこの先、暖を求めにここに移り住むかもしれません。貴方にはここで番をお願いしたいのです」
ならばとお言葉に甘え、春が来るまで下宿させてもらった。
だがついぞ鼠の一匹もみなかった。
これでは役立たずではないか…落ち込む私に女が言った。
「今年は巳年。貴方がいてくれたおかげでこの冬、我が家は金運に恵まれました」
それなら良かった。胸を張って、私はここを出ていく事にした。
だが家が裕福になっているようには見えない。
それでは申し訳ないと、私は脱皮し、その皮を夫婦へと渡した。
宿代になるか分からんが、弁財天様が褒めてくれた私の一張羅だ。