思い出屋さん

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「それでは、2025年2月5日の思い出を承ります。ご準備が整いましたら、開始ボタンを押してください」

僕は、ホログラム上の「開始」と書かれた部分に指をかざした。



今回の思い出は、思ったよりも高く売れた。平凡な会社員の僕の思い出に、なぜ高値が付くのか分からなかった。

思い出を一つ一つ売っていくと、不思議と心が軽くなるような気がした。お金も稼げるし一石二鳥だ。



思い出を売るために、思い出を作る。そんな日々が二年続いた。

思い出を売るために彼女を作り、思い出を売るためにデートをした。
どんどん思い出をお金に換えて、昨日の思い出も売り払った。さて、今日はどんな思い出を作ろうか。

突然、寝室の扉が勢いよく開いた。

「いつまで寝てるの?まさか今日がなんの日か、忘れた訳じゃないでしょうね」

僕はたぶん思い出を売りすぎた。
目の前の女性が誰なのか......思い出せないのだ。
SF
公開:25/02/05 14:36
更新:25/02/05 14:37

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