美肌になる山

登山好きの絢に連れられ、清美は「美肌になる山」だと噂の白美山にやって来た。登山には興味がないが、美容には興味がある清美は半信半疑で絢と登り始めた。
白美山は標高約1000m。雪が積もっているわけではないのに地面は白く、木も生えていない変わった山である。
この山には美肌になるための二つのルールがある。一つは、登り始めたら休憩をしてはいけないこと。もう一つは、水分を摂取してはいけないこと。
水も飲まずしばらく登り続けている絢と清美の体からは汗が大量に滴り落ちる。ペースも登り始めのころに比べたら極端に落ち、まるで元気を吸い取られているかのように足取りがゆっくりになる。
なんとか山頂についた二人の顔はシワだらけだった。そして、二人は息絶えた。
二体の死体は一晩で山に吸収された。
二人の体の水分を奪い、死体となった彼女たちから養分を吸収した山は、その山肌の白さをより一層増し、また一段と美肌になった。