追想の小旅行

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 特に予定の無い週末のはずだったのに、突発的な小旅行に出ていた。列車の窓からのどかな風景を眺めながら、ここ数ヶ月を振り返る。

 彼女に別れを切り出されたあの日から、僕の手帳は空白が目立ち、休日は丸一日布団でうだうだしているか、今みたいにその時の思いつきで行動することが多かった。自由で気楽にはなったけど、心のどこかで空虚さを拭い去れない。
 友達の数は少ないが、いい奴ばかりで、孤独感に打ちひしがれずに済んだのは感謝しかない。ただ、近場のどこで過ごしても、前はアイツと来たなぁ、という感覚が付き纏うのが悔しかった。

 今向かっているのは、程よい距離にある温泉観光地。目的は、彼女と一緒に行った美術館。感傷的な自傷行為にも思えるが、むしろ逆。
「有名な画家の絵があるらしいから行ってみよう!」大好きだった笑顔を思い出す。
 有名過ぎたのか貸出中で、彼女が見れなかった、あの絵の少女に会いにいくのだ!
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公開:25/01/29 01:55

いぬさか

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。

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