まぼろし鍋

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「ただいまぁー」

誰もいない部屋に私の声だけが響く
たいした家具も置いてないガラーンとした部屋
声もよけい響くってもんだ

疲れた身体に寒さが沁みるこの季節
こんな時は気ままに『一人鍋』でもして暖をとる!

グツグツ煮立つ鍋に具材を放り込むだけの料理はホントに助かる

鍋からあがる湯気は寒い部屋も温めてくれるように感じる

湯気の向こうに見える具材たちを見ていると実家で家族で鍋を食べてた頃の光景が甦る

「肉ばっか取るなー!」

いつも肉ばかり食べるのを注意されてた弟の姿

「野菜もちゃんと食べなさい!」

母親の声もしっかり再現される

賑やかな食卓が私の前に現れる
まるで湯気にホログラムが映し出されたかのように

私はぼーっとそのホログラムに映し出された懐かしい光景を見てた
その中の弟が私の鍋の肉ばかりを食べる

「えっ!?」

懐かしさに見とれていたわたしのお鍋からお肉も消えていた
その他
公開:25/02/02 00:06

icchi

頭の中に浮かんでは消える意味のない想いのようなものを成仏させてあげたくて書いてます

下記リンク先でこちらの作品含む活動を始めました
恋愛小説が多いですけど興味がありましたら覗いてみてください!
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