名画でショート043『マリーアントワネット最後の肖像』(ジャック=ルイ・ダヴィッド)

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あれだけ栄華を誇ったのに、落ちると惨めなものだ、とダヴィッドは思った。
あのヨーロッパを支配するハプルブルグ家の娘。善良だけが取りえで政治的能力も決断力もない無能なルイ16世の王妃。ロココ時代の華やかな宮廷の中心人物。
それがフランス革命により監視される立場となり、ヴァレンヌ逃亡にも失敗し、そしていま処刑台に向かって引かれていく。
ダヴィッドは彼女のことを無残にも冷筆で描いた。ハプスブルグ家の特徴である受口、バラバラの髪の毛、あわれな囚人服。あれだけ体型に気をつかっていたにも関わらず、少し崩れたスタイルまで。
いくら高貴なひととはいえ、権力を失ったらただの肉の塊。気にする必要はなにもない。
その時々の権力者になびいたダヴィッドは、ナポレオンに取り入り、ナポレオンの失脚とともに亡命を余儀なくされ異邦で亡くなることを、この時には想像できるわけもない。
その他
公開:25/01/25 11:24

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