最後の晩餐

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 その日は丁度世界が終わる日ということで、店には最後の晩餐を求める人々が数多く訪れていました。
 彼らは各々望む最後の料理を、これきり味わうことは無いのだから、と噛み締めています。ある者は上等肉のステーキを、ある者は無邪気にオムライスを、ある者は遠い故郷の家庭料理を。
 厨房は次々と舞い込む注文に、かつてない忙しさ。けれどその忙しさを最後に、もうじき全てが終わるのだという感慨が、皆の心に満ちていました。
 やっと、夕食時も終わり店を閉めた真夜中。
 店の者には、まかないのスープが振舞われました。
 それは、世界で最後の味をしていました。
 肉の切れ端、余った溶き卵、異国のスパイス。
 今宵の料理の欠片が優しく煮込まれています。
 給仕の少年は外階段に腰かけ、温かいスープを一口ずつ、口に運びました。
 見上げれば星は遥かに眩く、光は大きくなり、地上を焼き尽くすように覆い被さっていくのでした。
ファンタジー
公開:25/01/24 10:48

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