人を呪わば穴二つ

女は私に「夫に呪いをかけてくれ」と、言ってきた。
「出産の痛みを『大げさだ』と鼻で笑った夫に、私と同じ苦しみを味わわせてくれ」と、心から願っていた。
神である私はその願いを叶えた。
女の夫に陣痛で味わう痛みと同じものを与えてやった。
鼻の両穴からスイカ、尻からボーリングの球を産み落とす痛みに女の夫は何時間も苦しみ、痛みが過ぎ去った後、女に土下座して謝った。
いつの時代も痛みが人に教えるものは大きい。女の夫も陣痛を体験し、改心したそうだ。
女の願いは叶った。呪いは成就された。
だから今度は、女が呪いの代償を払う番だ。
女は今、再び陣痛の苦しみに襲われている。だが、とても嬉しそうだ。
聞けば医者から「二人目は諦めたほうがいい」と言われていたそうだ。
それが呪いのおかげか、こうして無事二人目も産む事が出来たと幸せそうに笑う。
呪いを逆手に自身の願いを叶えるとは、人間の機転にはいつも驚かされる。