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用紙はしなやかで細かな皺が頁に行き渡り、文字はミミズが密集したような感じ。表紙はベージュ色で人間の皮膚そっくりの質感で艶のある女性の肌を思わせる。この表紙には由来がある。戦国時代の昔、某国の姫君が政略結婚させられるのを拒んで井戸に身を投げた。姫の父はたいそう哀しみ姫を篤く葬ろうとするが、敵の王はその機を狙って城に攻め込み、城はあっけなく陥落。まだ屋敷に寝かされている姫の美しい遺体に敵の王は息を飲む。王は姫君の亡骸を持ち去り、国一番の剥製師に姫の美しい肌の蘇りを命じた。やがて一枚の輝くばかりの皮膚が王の前に差し出されると書物好きの王はその皮で本を作る。王は毎夜のように本に触れてし読書を楽しむ。触れると人肌のように暖かくなる本であった。
以上が本に書いてある。皮膚に似せた表紙とはまがい物だろう。手にとっても暖かくも何ともない。人肌本を勧めてくれた古書店主には申し訳ないが「要らない」と返した。
以上が本に書いてある。皮膚に似せた表紙とはまがい物だろう。手にとっても暖かくも何ともない。人肌本を勧めてくれた古書店主には申し訳ないが「要らない」と返した。
その他
公開:25/01/26 11:00
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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