底抜けシューズ

厚底シューズはランニング界に革命をもたらした。
軽ければ軽いほど良いという常識を覆し、少し重くても厚底が生む反発力で速く走れるようになった。
厚底シューズを履いた選手が次々と記録更新し、世界中を厚底シューズが席巻した。
それを覆すシューズが新たに生まれた。
完全に靴底をなくしたシューズだ。
靴底の代わりのものは企業秘密として明かされていない。
これによって超　軽量化による裸足のような足回りの良さと、高反発による爆発的な推進力を実現した。
しかし、このシューズには大きな欠陥があった。
ランナーの足に凄まじい負担がかかり、マラソンを走れば大怪我が避けられない。
選手を守るために世界陸連公式大会での使用が禁止された。
ところが、このシューズは飛ぶように売れた。
陸連のルールに縛られない市民ランナーが、怪我を覚悟の上で自己ベスト更新のために続々と購入した。
人の欲望には底がないのだろう。