観劇のお誘い

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 友達からチケットをもらって演劇を観に来た。「脇役だけど、舞台に立つから来てみてよ」と、彼は言っていた。こういうエンタメや芸術にはあまり親しみがない私は、漠然と「ありがとう」と返事をして、深く考えず受け取った。

 劇場の席に着いて最初の印象は「こぢんまり」だった。何となく、学園祭で、体育館でやるようなクラス劇を想起した。勿論、舞台も座席もしっかりしていて雰囲気があるけど、そんな規模感に感じた。
 幕が上がると一変した。演者の一声ひと声がこの場を掌握しているように感じた。小さな空間に思えた舞台上で次々と表現される物語に引き込まれた。
 誘ってくれた友達を探した。確かに主役ではなかったけど、普段の何倍も何倍も輝いていた。

 今思えば、初デートが演者と観客だなんて二人とも少しズレている。
 でも、最初から一番カッコイイ瞬間をぶつけられたあの日。そんな、いつも全力の彼のことが好きになっていた。
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公開:25/01/18 18:14

いぬさか

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。

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