コーヒーカップ

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 今日は健也と遊園地デートだ。一日楽しもうとフリーパスを買った。
「何から乗る?」
「健也の好きなものからでいいよ」
「じゃあコーヒーカップ」

 コーヒーカップは家族でも楽しめる定番アトラクションだ。のんびり乗ることもできるが、中央のハンドルを回すとカップの回転速度がさらに増す。
「よおし、いくぞ」
 健也がハンドルを回し始める。
「すごいすごい」
 私が言うと、健也は回すペースを早める。回転に加速度がつき、周囲の景色もぐるぐる回る。

「目が回るからそろそろやめようよ」
「いや、まだまだいける」
 健也は笑いながらさらに力を入れる。

「もう、やめて!」
「いや、もっと」
 本当に目が回ってきた。怖い、この人。

 時間が来てカップが止まった。
「楽しかった?」
「……」

 友人に、どうしてあんないい彼氏と別れたのって聞かれる。理由は遊園地のコーヒーカップだなんて、とても言えない。
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公開:25/01/21 19:05

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。

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