渡しうどん

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 通勤電車は待ち時間が少ないので気が付かなかったが、駅の近くに屋台がある。うどんの屋台だ。てっきり立ち食いと思ったら、ビニール袋の持ち帰りだ。老婆が独り座っている。試しに買ってみた。

 中には、汁の袋、うどんの袋、薬味の袋、この3つをまとめてビニール袋に入れている。二百五十円。お金を渡すと、うどんセットを渡してくれる。

 独りの部屋に帰り、カバンを置き、スーツを脱いで部屋着になり、狭い台所に立つ。鍋に汁とうどんを入れて温める。沸騰前に薬味を入れ、火を止めてどんぶりに移す。

 一口、汁を含むと驚いた。だしは濃いうまみがあり、うどんは手打ち。天かすは手作りで、ネギもワカメも絶妙だ。

 疲れた体に染み込んで、やっと一息つく。

 カーテンを閉め忘れたガラス窓には、仮面を脱いだ本当の「私」の顔が、都会の夜景の中に映っていた。

 
 

 
 

 

 
その他
公開:25/01/13 21:00

プリウス三世( 愛媛と高知 )

文章書く練習始めました。アニメ、原作小説、漫画を角度を変えて味わうのが好きです。

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