最強の修正液

結婚30年、妻は料理がとても上手だ。特に彼女の作るカレーは絶品で、これまで何百回と食べたが、どれだけ食べても飽きない。一体隠し味は何なのだろう。

ある日の仕事帰り、妻からおつかいの電話があった。

「お肉とにんじんと、あとカレーのルー買ってくれる？」

「お、今夜もカレーを作ってくれるのか？」

「いや作らないよ。でもあると安心するから。」

「安心？」

「あー、いや...」
彼女がバツが悪そうにはぐらかす。

「ごめんなさい...とうとう、あなたに真実を伝える時が来たようね...」

「ど、どうしたんだ急に！」

「落ち着いて聞いて。我が家でカレーが出る時、それは私が料理を失敗した時なのよ。おかずを焦がしちゃった時、調味料を間違えた時、そんな時は必ずカレーにしてしまう。カレーは全ての料理の失敗を無に帰す。そう、カレーは、最強の修正液なのよ。」

そういえば、昨日もカレーだったな。