バイオリズム

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地球に住むのが嫌になったから、火星への移住を決心した。会社に辞表をだし、友人にサヨナラのあいさつをし、アパートを引き払う手続きをし、貯金をぜんぶおろした。あとは片道切符を買うだけだ。
宇宙空港の窓辺から、空に架かる新月を眺めた。火星に行ったらシールドのなかで暮らすことになるから、これも見納めだ。
そういえばわたしは満月の晩に産まれたと聞いている。だからなのか、今さらになって、名残惜しい感覚がある。
ほんの半月待てば、この月も満ちるんだろう――そう思ったら、選択に自信がなくなった。そもそも誰も知ってるひとのいない場所でどうやって生きてくつもりだったのかと、泣きたくなった。
かと言って、もう仕事も住むところもない。ほんとにみっともないし情けないと思ったけど、友人に電話して助けを求めた。友人は、「初めからやり直しだけどそれもいいんじゃない?」と笑ってくれた。
SF
公開:25/01/16 15:14

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

イラストはibisPaintを使っています。

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