巨大な

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 長生きに苦しんだ地球の人々は、暇つぶしに他の動物を殺し始めたが、それに飽きると、今度は人間同士で殺し合って、大地を真っ赤な血で染めた。
 生命がみんな死んだ後、宇宙から、シュッシュッ、という音が聞こえてきた。
 それはティッシュペーパーを引き抜く音だった。
 そして、空を覆いつくすような巨大なティッシュペーパーを持った巨大な手が現れた。
 巨大な手は、巨大なティッシュペーパーで、大地の血を拭き取り始めた。しかしそれは大地に染み込んでしまっていたり、ティッシュペーパーで拭うと延びて拡がってしまったりした。
 巨大な舌打ちが聞こえてきて、ティッシュペーパーが引っ込んだ。
 そして今度は、ガサガサ、という音が聞こえてきた。
 それは巨大なゴミ袋の口を開ける音だった。
 巨大な手が再び現れて、地球をむんずと掴んだ。
SF
公開:25/01/15 23:21

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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