天才外科医のおまじない

天才外科医と呼ばれる私は、手術室に必ず石を持ち込む。
私の手術には石が欠かせなくてね。
そんな物どうするのかって？患者の体内に置いていくんだ。
確かに医学的には意味のない行為だ。だが、これには大きな意味がある。
私は手術を「ヤマ」と呼ぶ。手術する事を「ヤマに登る」なんて言う事もある。
私は登山が趣味でね、難しい山にも何度か挑戦している。
そんな時、よく見かけるんだ。山道の途中で石を積み上げて作られた石柱を。それは「ケルン」と言って、道標みたいなものだ。
私はこの石にケルンと同じ意味を持たせる。手術の到達地点。そして、手術が成功した証だ。
また、この石は要石の意味もある。
要石には地震を抑える効果がある。要石を患者の体内に置いておく事で、手術の成功は揺るがないってね。
数年前、某国の要人がスナイパーに狙われるも、銃弾は要石に刺さり、命拾いした。どうやら置くだけで患者の無事も揺るがないようだ。