野良道

散歩中、公園の向こうに野良道を見つけた。
懐かしい。私が子どもの頃はよく遭遇したのだが、最近では行政が野良道を見つけるとすぐに保護し、あっという間に人に飼い慣らされた道へと変えてしまう。
正直、そんな道ばかりが増え退屈していたところだ。久しぶりに野良道を歩いてみよう。

どうやらこの野良道、元飼い道だったようだ。獣道っぽさがありながら、人に慣れている。
その背を優しく撫でるように歩くと野良道は嬉しそうに靴と共鳴する。
「こんにちは」
向こうからやってきた高齢の女性に声をかけられた。私も『こんにちは』と返す。
「貴方、野良道の扱いに慣れているわね」
『ええ、昔から道に懐かれる性質でして』
「そうなの？それじゃ、春になったらまたここに来るといいわ。この道はね、地域道なの」
女性が道の先を指さす。V字にカットされたそれを見て、ピンときた。
そうか。ここは地域住民に世話をされてる、さくら道なんだ。