十年後の未来に

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同棲して三年目、話があると言われたとき、いよいよプロポーズされるのだと思った。なのにパジャマを着たままの彼はこう言ったのだ。別れたい、って。
異変は感じてた。予感もしてた。だけどぜんぶ気のせいだと言い聞かせて心の声に耳をふさいだ。
みっともなくすがるつもりはないけど、理由くらいは知りたい。でも動揺して言葉がでてこない。「ちょっと外の空気すってくる」と告げて近所のカフェに向かう。
皮肉なほど穏やかな冬の朝。ひとり静かにコーヒーを飲みたいのに、窓際の女ふたり、赤裸々トークで盛りあがってる。
「結婚なんて地獄、大きなこどもの世話をしてるみたい」「こんなことなら結婚なんかするんじゃなかった」
予定より早くカフェをでて、十年後の未来を想像した。隣に彼はいないけど、そんな未来も悪くないと思えた。帰ったらこの気持ちを伝えよう。未来のわたしたちがしあわせになるために。
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公開:25/01/11 14:49

いちいおと( japan )

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清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

イラストはibisPaintを使っています。

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