それは広大な砂漠にばら撒かれた、一瓶の胡椒の中身を全て元通り集めるような行為であった

広い海の中を、私は何年、何十年、何百年と泳ぎ続けている。この広い海を隅々まで泳いだ。
何でそんな事をしているのかって？私は泡を集めているんだ。
ただの泡じゃない。かつて人魚姫と呼ばれていた者の泡だ。
恥ずかしい話、私は姫に恋慕していた。だが私ではあまりにも姫と不釣り合いだと告白もせずに諦めていた。
それを後悔したのは姫が泡となって海に溶けた後…以来、私の中に姫への想いだけが残ってしまった。
そんな私に魔女が教えてくれた。姫の欠片…泡を全て集めれば姫は再び人魚に戻れると。
私は泡を集める旅に出た。そして今日、ついに全ての泡を集め切った。
人魚の姿を取り戻した姫。私は積年の想いを姫へと告げた。姫は私の告白を受け止めてくれた。
良かった…もし、断られたなら今度は私が泡になってしまうところだった。
「あら？泡も案外悪くなかったわよ。私の場合、私を元に戻してくれた王子様の活躍を間近で見れたのだから」