真っ赤な瞳

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私は前を見つめています。
何もないことを祈りながら。
声を出して注意したり、叫んで助けを呼んだりもできないのです。
何も言わずに瞳を順番に開いて見つめています。
簡単な仕事だとよく言われてしまいます。
とんでもない。
年中無休で外で立ち続けないといけないのです。
暑い日も寒い日も雨の日も雪の日も。
結構、辛い仕事です。
目の前で悲劇が起こっても、私は見つめ続けなければいけません。
悲劇を見るのは本当に嫌です。
あぁ、それなのに。
青色の瞳を閉じながら、黄色の瞳で猛スピードで迫る車を見つめながら「危ない、お願いだから止まって、私の瞳を見て」と祈り続けました。
大きな音の後、赤色の瞳を開くと、大きく凹んだ車と壊れた人形のように空を舞うヒト。
今日も悲劇を見つめることしかできなかった。
信号機の瞳の一つが真っ赤なのは、血の色がわからないようにするため、私達が瞳を開くのをやめないように。
その他
公開:25/01/07 14:18

小タ

思うまま、感じたままに文章を書いています。
皆様に読んで頂けたら嬉しいです。

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