六脚のワルツ

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ヒュー

大きな風が笛を吹く、さらに高音で空を掻っ切るように吹く。
恐ろしくなり、耳を塞ぐ。
「いやだね、笛の名人はこんな悲鳴みたいな音は出さないよ!このヘタクソ!!」
空を見上げると、どんよりとした雲が生意気な私に向かって雷を落とそうとしている。
「かんにんやで。あんさんに勝てるとわ思うてないわ」

ゴロゴロゴロ

ダンッ!ダンッ!

「そんな本気で怒らなさんな。もうわかっているよ。季節外れに雹が降るって事は……」

姿勢を正し、無慈悲に落ちる気まぐれなレディ雹にお辞儀し、一緒にワルツを踊る。
レディは私の緑の一張羅に傷をつける。
自慢の美脚は泥だらけ。
でも踊る。
これは私の最終演舞だ。


「氷をばら撒いてる雹は絵になりませんなぁ。ごらんなさい、泥にまみれてバッタが死にものぐるいですよ」
「そうですか?私には自然淘汰を魂で舞うバッタの誇りを感じますが」

大地を打ち、新たが生まれる。
公開:25/01/04 21:40
更新:25/01/04 21:43
無有好醜 再生

さささ ゆゆ( 東京 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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