巳鏡（みかがみ）

蛇の意匠が施された禍々しい鏡。巳鏡。それを覗き込んだ私は悲鳴を漏らす。
私の周りに蛇が映り込んでいる。それもただの蛇ではない。人の頭を持った蛇だ。その顔は両親から彼のものまである。
不快感を露にする私に鏡の持ち主は微笑んだ。
「貴方の身体に絡みついている蛇はいない？なら良かった」
聞けばこの鏡、己を取り巻く者の姿を蛇に変えて見せるそうだ。
周りにいる蛇は私を見守ってくれる守護蛇。悪いものではない。
その蛇が体に巻き付くと要注意。
足に絡みく蛇は足を引っ張り、飲み込もうとする蛇は私を取り込む意志があり、首に巻き付く蛇は私を殺そうとしているらしい。悪意ある蛇がいないと知り、ホッとする。
次に彼も巳鏡を覗き込み、悲鳴を上げた。
…いや、違う。彼は私を見て怯えている。
巳鏡を見る。私の顔を持つ蛇が鋭い牙で彼の鈍感な部分に噛みついていた。
遺産狙いで密かに毒でじわじわと弱らせているのがバレちゃった…