言葉で夢を見る

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言葉で夢を見る男に会った。
盲目の者の夢でも言葉だけの夢はめずらしい。
彼と会ったのは人の夢を覗き、こぼれ落ちそうな精気を探し、じっとそばで待つ、そんな中だった。
夢の中で、彼の従者の声が雪のように絶え間なく続く。
砂だけの世界に輝く夜の星々。
視界いっぱいに広がる水のたまり。
見たこともない景色が鮮明に映される。
夢に魅了されるのは初めてだった。
他の夢魔のように女であれば、男を誘惑し支配し、夢を自在に操れたが、私に欲情するものはいない。
人間の国では、男に欲情する者たちは母と同じく異端として焼かれていった。
今は落ちた精気を食べて生きている。
こんな生活が続けられるはずはなく、彼の夢の中で生きたいとつくづく思う。
彼が夢を見る時間が増えてきた。
今では寝たきりになっている。
彼の夢をただ眺めて日々を過ごす。
腹が減った。
しかし、夢はいつも美しい。
私は夢の中に吸い込まれるように眠る。
その他
公開:25/01/05 22:47

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