カルテッド

役者志望の私と脚本家の卵の親友。大道具＆照明担当と小道具＆音響担当の双子。
この４人で始めた小さな劇団も気が付けば大所帯となった。チケットを発売すれば即完売。知らぬ者はいない大人気劇団。
そのトップである私達は今も昔からお世話になっている小さなパブで一人芝居を披露している。当然これは知る人ぞ知る秘密の公演。
芝居を終えると店主の料理に舌鼓を打ちながら反省会。偉くなっても私はまだまだ未熟だ。
その未熟さを補う為に店主が料理してくれたセリフを食べる。言葉を噛みしめ、己のものにする。
セリフは食べろ。私の尊敬する役者さんの言葉だ。
「今日もありがとう。これからもよろしく」
食べたばかりのセリフを３人に告げる。
すると３人は私の料理に手を伸ばし、それを口にする。
「どういたしまして。明日からもよろしく」
そう言って３人は苦笑いを浮かべた。この料理は、意地っ張りで素直になれない私達の口に合わないな。