言葉のブーメラン

デート中、何かがこっちに飛んでくる。空中でキャッチしたそれは”ありがとう”と書かれたブーメランだった。
「言葉のブーメランだ」と、彼女。それを投げてみせる。ブーメランは綺麗な放物線を描いて戻ってきた。上手いもんだ。
僕も投げてみた。しかしブーメランは戻ってくるどころかまともに飛んでくれない。
「言葉のブーメランは、その言葉を普段からよく使ってないと戻ってこないよ」
普段、ありがとうをあまり言わない僕。少し悔しい。
ブーメランを持ち主に返すと僕はあるものを購入し、公園へとやって来た。
僕はそれを少し離れた場所に立つ彼女へ投げる。緩やかな放物線を描きながら、ゆっくりと彼女の手元に落ちるそれは”愛している”と書かれた言葉のフライングディスク。
ブーメランと違い、真っ直ぐにしか飛ばないそれは僕と彼女の間にどれだけ障害物があろうとも、迷いなく彼女のもとへと飛んで行く。一途に愛を囁き続けた賜物である。