2
2
ヨルはわたしの耳もとで、そろそろ出発する時間よ、と告げている。
わたしは寝ぼけ眼で起き上がってきいた。
「過去は?」
「そのまま足もとのトランクに詰めて」
過去なんて、いっそのこと氷漬けにして海に流してしまいたい。あるいはわたしのことをこっぴどく振ったあのひとみたいに、遠く離れたところへ行ってほしい。
ぐずぐずしているわたしを、ヨルはしずかになだめた。
「いまのあなたを支えるのは過去のあなたよ。傷ついた過去のあなたを、いまのあなたがうけいれてあげて」
いまのわたしもキライなのに、そんなの到底無理。未来にだって希望は持てない。だけどトランクは月のような白銀色に輝いていて。まるでわたしに使われるのを心待ちにしているかのよう。
「ヨルはわたしを見守っていてくれる?」
返事をしない代わりに薄明のカーテンをひらいて見せると、ヨルはしじまに消えていった。
わたしは寝ぼけ眼で起き上がってきいた。
「過去は?」
「そのまま足もとのトランクに詰めて」
過去なんて、いっそのこと氷漬けにして海に流してしまいたい。あるいはわたしのことをこっぴどく振ったあのひとみたいに、遠く離れたところへ行ってほしい。
ぐずぐずしているわたしを、ヨルはしずかになだめた。
「いまのあなたを支えるのは過去のあなたよ。傷ついた過去のあなたを、いまのあなたがうけいれてあげて」
いまのわたしもキライなのに、そんなの到底無理。未来にだって希望は持てない。だけどトランクは月のような白銀色に輝いていて。まるでわたしに使われるのを心待ちにしているかのよう。
「ヨルはわたしを見守っていてくれる?」
返事をしない代わりに薄明のカーテンをひらいて見せると、ヨルはしじまに消えていった。
ファンタジー
公開:24/12/30 18:50
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
イラストはibisPaintを使っています。
ログインするとコメントを投稿できます