名画でショート040『ヒッポメネスとアトランタ』(グイド・レーニ)

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その昔、神は裸体であった。
肉体は神聖であり、存在そのものが神々しいため、余計な虚飾は不要なのだ。
画家たちは神々を当時の基準において、最高の美である健康なる肉体、つまり最高の裸体で描き続けた。
ところが、時代が過ぎて、いつしか裸体は恥ずかしいものとされ、とくに局部は隠すものとされた。画家たちは神々にローブをまとわせることになった。
とはいえ神である。隠す部分は最低限にしなければならない。
ローブは奇妙な形に曲がり、性器部分だけ隠すように配置された。人間たちは神々の裸体を見ないように、神々がいるのに、なぜか違う方向を向いている。
神はいつまでも神なのに。
その人間界の様子を、天上界の神々は、不思議そうな目線で眺め続けた。
その他
公開:25/01/03 10:07

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