カルテッド

祖父の遺産分けが行われた時、私は音大卒というだけで置物と化していてピアノを押し付けられた。
ついでにトランペットとクラシックギターも引き取らされた。
厄介な事にそれらには幽霊が憑りついていた。幽霊は楽器を好き勝手鳴らす。
私はため息をつくとピアノに憑りついた幽霊からレッスンを始めた。
私の技量は人並みだが、その音色に幽霊は心惹かれるものがあったのだろう。私の隣に座って私と同じように弾き始めた。
トランペットやギターについても同様に教えてあげた。どちらもかろうじて演奏できる程度だったそれに幽霊は興味を持ってくれた。
３人の幽霊はジャズが好きなようだ。その演奏に耳を傾け、歌を口遊む。するとどこからともなくマイクが飛んできた。
この日、私は３人の幽霊とジャズバンドを組んだ。
私達のライブに来るお客さんの多くは幽霊で「不要なものだから」と言っては、お代として生前溜め込んでいた資産を押し付けていく。