棚卸し

正月前に棚卸しを行うことにした。
年始から怒涛の忙しさだったものだから、急を要さないものはいったん戸棚にしまっておこうと、あれこれ詰め込んでいる。まずはなにがあるのか把握することが肝心だ、と扉を開けたら、投げ入れていた『後悔』が崩れ落ちてきた。触れた途端に頭をよぎるさまざまな事柄とそれにまつわる形ある物たちが、恨めしげにこちらをじっとりとみつめている気がした。机の上には新しい趣味にしようと購入した刺繍セットに山になった本があるはずだ。よし、彼らは来年なんとかしよう、と棚に目をやる。そこには『怒り』が居座っていた。今年も思いどおりにならないことばかりだったから、想定はしていた。だからその奥に『あきらめ』があることも知っている。最深部には長年溜め込んだ『不満』が眠っていることも。
答えがでないことは放っておくに限る。それが気楽に生きるための術だ。私は戸棚をそっと閉じて寝ることにした。