年神様のお嫁さん

幼い頃、年神様に見初められた私は大人になったら年神様のお嫁さんになるんだと両親から教えられてきた。
昔はそれが誇らしかったが、大人に近づくにつれ嫌気がさしてきた。だから家出した。
都会で暮らし始め、彼氏を作り、結婚した。何なら子どもだっている。
「ぼく、おおきくなったらママとけっこんする！」と言ってくれる可愛い息子。
その一切を両親には伝えていない。もう会う事はない…そう考えていた。
だけど夫が失業し、私達に暴力を振るうようになってからはそうも言ってられなくなった。
私は息子を連れ、逃げるように実家へと戻って来た。
数年ぶりに帰ってきた私を両親は暖かく迎えてくれた。
初孫である息子を見て、涙を流した。
「年神様、ようこそお越し下さいました。不束な娘ではありますが、どうか幸せにしてやって下さい」
両親の突然の土下座に困惑する私。
「もちろんだとも」
そう答える息子は私よりずっと年上に感じた。