海鮮の月

0
1

 この古い港町には月を食べれる居酒屋があるらしい。

 瀬戸内の凪の夜、海面に映った月に網が掛かると、数万回に一回、獲れることがあるらしい。そんな噂を信じて静かな夜の翌日は、開店前にその小さな漁港の居酒屋の前を散歩する。

 そして変哲もない日に、その時は来た。
「海鮮の月あります、先着一名」

 開店を待ちわびて、注文した。
 出された料理は、イカの刺身の様だった。刺身醤油をつけて食べると、正にイカ。
「これ、本当に海鮮の月?」
と、尋ねると、
「お客さんは、本当に運がいいですね、ご内密に」
と、店主は笑みを浮かべていた。

 一品にしては高すぎるお代と敬意をはらい、帰宅の途に就いた。今日は風が出そうだなと、思いながら寝ることとした。

 布団に入り枕元のスタンドの灯りを消すと、その指先が淡く水色に光っていた。

 

 

 

 
その他
公開:24/12/23 11:21

プリウス三世( 愛媛と高知 )

文章書く練習始めました。アニメ、原作小説、漫画を角度を変えて味わうのが好きです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容