いつかきっとよくなるからさ

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駅を出るとまだ22時になっていなかった。少し早く帰れたな、と思う時点でだいぶ病んでいるのだがどうしようもない。

家路を歩きながら、明日の仕事のことを考えた。毎日毎日仕事しかしていない。働いて、金を貰って、生活に充てて、寝て起きての繰り返し。毎日ただ生き長らえているだけ。俺は不幸だ。

アパートに帰ると、母が炬燵から起き出して台所に立った。
「今日はカキフライだよ」
「今から?」
「揚げたてがいいだろ? アンタはベランダの大根抜いて摺ってちょうだい」
プランターで育った大根は小さかった。思わず笑ってしまう。「母ちゃんこりゃまるで人参だ」
「買うと高いんだよ。有り難いだろう」
母と並んで台所に立ち、大根を摺った。辛くて美味そうだ。揚げ物のにおいも食欲をそそる。
「さあ揚がった。お食べ」
牡蠣を口に放り込む。うまい。
小ぶりだが、これを幸福と呼んだっていいのだ。俺は不幸ではない。
そう思えた。
その他
公開:24/12/24 21:25

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