主張

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 ある日の昼下がり、母子が墓地の前を通りかかる。
 息子がふと立ち止まる。
 息子が墓地の中を指さして母親に尋ねる。
「あれ何、あれ何」
 母親は息子が何を指さしているかわからない。
 母親は息子の手を引っ張り墓地の前を無理矢理通りすぎる。
 数日後、母子が墓地の前を再び通りかかる。
 息子が墓地の中を指さして母親に尋ねる。
「あれ誰、あれ誰」
 母親は息子が何を指さしているかわからない。
 母親は息子の手を引っ張り墓地の前を無理矢理通りすぎる。
 数日後、母子が墓地の前を再び通りかかる。
 息子が墓地の入り口を指さして母親に尋ねる。
「これ誰、これ誰」
 母親は息子の手を引っ張り墓地の前を無理矢理通りすぎようとする。
 息子が母親を指さして母親に尋ねる。
「きみ誰、きみ誰」
 母親が思わず息子から手を離す。
 息子が自身の顔を指さして呟く。
「俺ここ、俺ここ」
ホラー
公開:24/12/16 21:03

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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