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「こんにちは~」

友人に紹介された路地裏にある古本屋を訪ねたのだが、店主の姿が見当たらない。柔らかな陽光でぽやんと明るい店内は温かく、古本たちの寝息が聞こえてきそうな心地よさだ。

「…ごめんねぇ、今ちょっと手が離せなくて…。ご用ならこちらへどうぞ」

店の奥から穏やかな声が答えた。きっと店主だ。




「…おや、もっとかぃ?」

呼ばれた方へ近づいていったら、暖簾越しにまた声が聞こえた。「お邪魔します」と告げて暖簾をくぐると、耳かきを持ったおばあさんの膝の上で、甘えるようにドッグイヤーのついた古本が大の字になってページを開いていた。

「この子はたくさんお耳があるから、耳掃除が大好きでねぇ。…さぁ、おしまい」

本をぱたんと閉じると、店主はあやすように表紙をぽんぽんとした。…この人に決めた!

「うちの子もお願いできますか?」

私は鞄からドッグイヤーだらけの愛読書を取り出した。
その他
公開:24/12/16 07:12

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。(基本的に予約投稿)

※28日以降、年末年始はガーデンへの訪問をお休みさせて頂きます。
今年もありがとうございました、よいお年を!

 

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