名画でショート038『バベルの塔』(ピーテル・ブリューゲル)

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人間はなんと小さな生物なのだろうか、とバベルの塔から見下ろすレンガ職人は思った。
建築途中のバベルの塔から眺める景色は爽快だ。
足元に広がる海には、木の葉のような船が浮かんでいる。反対側の台地には、麦の穂のような小さな家が並んでいる。
太陽が沈もうとするとき、バベルの塔は頭から赤く染まっていく。
地上にはニムロド王の姿が見える。大洪水を生き抜いたノアの息子。有能なる狩人。
だが、彼は優秀な建築家ではなかったようだ。
塔は少し傾いている。これが自重の故なのか、設計なのかは分からない。
ニムロド王は傾きに気が付くことなく、視察を続けている。
レンガ職人はふと気が付いた。
傾いているのは塔ではなく、この世界ではないのかと。
ファンタジー
公開:24/12/20 17:35

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