かしおり

「明日、会いに行くお得意様は甘いものが大好きでな、かしおりが必要になると思うぞ」
上司の言葉に、スイーツ大好きな私は自慢の菓子折りを用意した。
それをお得意様に差し出したところ、「○○屋のどら焼きか…店主は元気かい？」と聞かれた。
驚いた。このどら焼きは私の地元商店街で売られているもの。当然、ガイドブックに載っているような代物ではない。
「私は食べ歩きが趣味でね。ここはよく行くんだ。このどら焼きを勧めてくれたキミに、私はこの店を勧めよう」
紙の地図を取り出し大きく広げるお得意様。その指さす店は私のお気に入りの喫茶店だった。
好みをズバリ言い当てられ、再び驚く私。ほくそ笑むお得意様。
「ここもお勧めだぞ。ああ、ここなんかも捨てがたい…あとここは…」
仕事の話もそこそこに、スイーツの話で盛り上がる。
メモでは追い付かない私に、上司が地図と栞を差し出してきた。
「菓栞だ。これを地図に挟むといい」