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いま俺は最大の危機に陥っている。
妻が斬新な金色のスーツをすすめてくるのに対し、母は定番の赤いスーツを着るよう提案してくるのだ。
妻いわく、「世のこどもたちは真新しいサンタクロースを見たがっている」らしい。しかし母の、「サンタクロースと言ったら赤いスーツでしょ。金色のスーツなんて着たら不審者と間違われるわ」にも納得がゆく。
しかしもしここで俺が赤いスーツを選んだら、妻は傷つき、自信を失ってしまうかもしれない。かといって金色のスーツを選べば、母は俺たち夫婦と二度と口をきいてくれなくなってしまうかもしれない。
迷いの森に入り込んでしまった俺は、街のおもちゃ屋を巡る放浪の旅に出た。そして最終的に、どちらにも寄らない決断を下した。
クリスマスの夜、俺は黒と緑の市松模様の羽織に杉材の木箱を背負ってプレゼントを配り歩くつもりだ。
その他
公開:24/12/14 10:28

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
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清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

イラストはibisPaintを使っています。

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