名画でショート037『シテール島の巡礼』(アントワーヌ・ヴァトー)

シテール島は、愛の女神ヴィーナスが上陸した島である。この島にはヴィーナスの魔法がかけられており、この島にいくだけで素晴らしい愛を得られるという。
この島に、陶酔感に飢えている紳士淑女がこぞって上陸した。
紳士たちは新しい恋を求めて、淑女たちは一晩の冒険を探しに、老人たちは若き日の情熱を思い出すために、宗教家たちは聖職者としての重荷から逃れるために、シテール島に足を踏み入れた。
この島に足を踏み入れた途端に、紳士淑女たちは開放感に満ち溢れる。
空に舞うアモールたちの導きにより、老いも若きも近くの愛を求める。既婚者も未婚者も、身分も職業も関係がない。
全てはアモールたちの思うがまま。
紳士淑女はそう信じたが、実はアモールたちは人間の虚構をはぎ取っただけだ。これが人間の真の姿なのだ。
あさましい人間たちの姿を見た女神たちが、どう感じたのかは定かではない。