ブラックサンタに攫われた僕の話

クリスマスの夜。僕は黒いサンタに誘拐された。
もし、黒いサンタに誘拐されていなければ、僕は死んでいただろう。
育児放棄。意識を失う直前まで僕は死を覚悟していた。死んで楽になりたいと思っていた。
それを黒いサンタに咎められた。
「親より先に死ぬ悪い子の身柄は儂が貰う。お前にはこれから儂のもとでしっかりと働いてもらうからな！」
そう僕を脅した黒いサンタ。
僕は黒いサンタの下でよく食べ、よく寝て、よく学び、健やかに育った。
黒いサンタが言うには、それは子どもの仕事だそうだ。
その仕事は、僕がずっと欲しかったものでもあった。
あまりの幸せに涙が出る。
感謝の言葉を告げようとする僕に黒いサンタは「泣き言を言うな」とぶっきらぼうに言い捨てた。
世間では嫌われ者の黒いサンタ。
でも僕にとっては憧れの人。だから僕もブラックサンタになった。
子ども達を攫って助ける。そんなダークヒーローになりたかったからだ。