サンタクロースになりたかった俺の話

俺は子どもの頃、サンタクロースになりたかった。
空飛ぶトナカイに欲しい玩具が出てくる魔法の袋。子どもが憧れるには十分だ。
それに俺は生まれつき体が大きく、力も強かった。後は髭があれば完璧だな。
サンタになるには、サンタクロース検定に合格する必要がある事を知った。
面接では英語かデンマーク語かを求められるらしい。念のため、両方勉強しておくか。
体力づくりも、日ごろから身だしなみを整えるのも、バイトで接客能力を向上させたのも、全てはサンタクロースになる為だった。
だけど俺は、サンタクロースになれなかった…その悔しさを今、噛みしめている。
今の俺はプレゼントの袋ではなく、皆の期待を背負い、日本人宇宙飛行士としてスペースシャトルに乗っている。
そういえば、誰かが言っていたな。
子どもは大人を越えて行くものだと。
なあ、サンタクロース。どうやら俺は今から、アンタのずっと上を飛んで行く事になるらしい。