戦場のサンタクロース

俺は昔、敵国の兵士に命を助けられた。
市街地での戦闘。子どもの頃、それに逃げ遅れた俺は道路の真ん中で血を流していた。
そこを医療兵だと名乗る男に助けられた。
男は俺に薬と食料をくれた。
怪我人を前に敵も味方もないと話す男。俺は男に感謝した。
「また会えるかな？」と聞くと「君が良い子にしていたらね」と言われた。

戦争が終わった。
俺はあの時の男を探しに行く。だけど、会えなかった。
男はスパイ容疑で処刑されたと聞かされた。
戦没者の慰霊碑にその名を刻まれる事もない。
俺は命の恩人の死に涙した。

大人になった俺が医者になったのは、あの男の影響だ。
今日も貧富に関係なく困っている人を助ける。
クリスマスも家族より患者を優先した。
その日、帰宅するとリビングにサンタクロースがいた。
歳を取っていても、俺はその顔を見てすぐに分かった。
「良い子にしてた君に会いに来たよ」とサンタクロースは笑った。