ショートカット

学生時分、寝坊助だった私を父はよく学校まで送ってくれた。
起きて顔を洗い、身支度を整えると朝食を持って車へと乗り込む。カーナビから流れるニュースを見ながら食事をしていると、まるで社長になった気分だ。
布団から車の中に直で放り込まれ、目が覚めると学校の前にいた…なんて事もあった。
本来なら、自力で行かなきゃならないのに私はその時間の多くをショートカットしていた。懐かしい思い出だ。
今や外を見ると車なんて走っていない。
ついにあの”どこでもドア”が完成してしまったからだ。目的地までノータイム。まさに最強のショートカットである。
だが、私はどこでもドアより、今でも車を愛用している。
私は車の運転が好きだ。自動運転システムに運転は任せない。わざわざ私が運転する。
目的は寄り道＆回り道。それはどこでもドアでは味わえないもの。
ショートカットしてばかりでは見つけられないものを私は車移動で見つけている。